ロココ Rococo
上流階級の貴婦人たちが愛してやまなかったのは華美で快楽的なロココ芸術

     スタニスラス・レスチンスキー ガレの父もマジョレルの父もロココ様式の工芸職人だった。ロココ芸術の装飾的伝統は、1世紀後にナンシー派のアール・ヌーヴォーへと受け継がれた。

スタニスラス広場に建つスタニスラス王の像

スタニスラス広場はナンシーの街の中心地。人々はロココ様式の豪奢な門をくぐり、噴水に憩い、カフェで語り合う。装飾の細部にまで精密な技術が見える。
 
 ナンシーは15世紀以来、ロレーヌ公国の首都として栄えてきたが、今日見られるような街並が築かれたのは18世紀中頃のこと。 ルイ15世の義父であるスタニスラス・レスチンスキーがロレーヌ公国の王位に就いてからだ。スタニスラス王はこの地を統治しながら、建築をはじめとする芸術活動に情熱を傾けた。そのスタニスラス王がナンシーに咲かせた大輪の花がロココ建築である。

ジャン・ラムールが手がけた装飾の細部  ロココとは、18世紀のヨーロッパを席捲した美術様式。建築だけでなく、絵画、彫刻、工芸にも及び、先行するバロック様式と同じように絢爛豪華な装飾を特徴とする。もともとロココは、バロック期に流行した人工洞窟に施される貝殻などを使った装飾“ロカイユ”に由来する言葉。バロックとは境界があいまいな場合もあるが、総じてドラマチックで力強いバロックに比べると、ロココは優美軽快で、複雑に絡み合った繊細な曲線が多く見られる。

 ロココはまた、シノワズリ(中国趣味)をはじめとするエキゾチズムが顕著。この点、アール・ヌーヴォーにおけるジャポネズリ(日本趣味)と好対照をなしている。

スタニスラス広場から出発する馬車に乗った市内ツアー  スタニスラス王がエマニュエル・エレに命じて造らせたスタニスラス広場も、フランスの優れたロココ建築のひとつに数えられる。王の像が建つスタニスラス広場につづくカリエール広場、アリアンス広場、そしてロレーヌ地方博物館 Musee Lorrainが利用しているロレーヌ公の館が、現在のナンシー市の中心部を占めている。なかでも、とくに見事なロココ建築が、スタニスラス広場を飾るネプトゥヌスの門。壮麗な鉄骨細工に施された金と黒の色彩対比は、昼間もさることながら、人工照明に照らし出される夜になるといっそうの輝きを増す。これを造営した王を“絢爛たるスタニスラス”と呼ぶゆえんである。

 ちなみに、スタニスラス広場は、隣り合うカリエール広場、アリアンス広場とともにユネスコの世界遺産に登録されている。(1983年登録)

 2005年、ナンシー市は、スタニスラス広場建造250年を祝います。詳しくは、こちらから